吹奏楽作品

編曲・校訂作品

ワルシャワ砲撃のエチュード(革命のエチュード)

Title:$00C9tude on the Bombadment of Warsaw (Revolutionary $00C9tude)

作曲年月日:2022年 10月 30日

女心の歌 ~リゴレット・ファンタジー

Title:La donna $00E8 mobile, Fantasia su “Rigoletto” per strumenti a fiato
Subtitle:

作曲年月日:2022年 8月
演奏時間:4(約)

プログラムノート ヴェルディ中期のオペラの傑作の一つ「リゴレット」から、マントヴァ公爵が歌う有名な「女心の歌」を中心に編んだ。
冒頭は、このオペラの前奏曲の冒頭部分。原曲は、金管楽器を中心とした、いわゆる「吹奏楽」で始まる。この編曲ではサクソフォーンを重ねたが、これは、ホルンやバスーンの代用。このモティーフは、モンテローネ伯爵の呪いの主題。
前奏曲に続いてオペラの幕が開くと、公爵の宮殿でバンダの演奏が始まる。つまりBGMだ。これが原曲では「吹奏楽」編成で書かれている。ここからの冒頭部分を使った。実際にはほぼトゥッティで演奏されるため、オーケストレーションに若干工夫を凝らした。打楽器はスネア・ドラムとバス・ドラムとなっているが、音楽の雰囲気に合わせて楽器を自在に変えてみても良いだろう。
そして、62小節からのF音のオクターヴ跳躍は、本来ならここからマントヴァ公爵のアリア「あれか、これか」につながるところだが、ここから第3幕で公爵が歌う「女心の歌」へと進む。原曲はロ長調だが、演奏のしやすさを考え、半音下の変ロ長調とした。
このアリアでは、歌詞が作り出すフレーズを感じるべく、スコア最上段に歌詞とともにメロディを掲載した。
67小節から演奏を開始し、「女心の歌」単独の演奏も可能である。
また、29、30ページには、フレーズの感じ方のための譜例を掲載したので、演奏に役立ててほしい。一層音楽的な表現ができるだろう。

初演データ (初演日)2022年9月9日
歌の翼に(メンデルスゾーン作曲)

Title:Auf Flugeln des Gesanges (by F.Mendelssohn)

作曲年月日:2018年
演奏時間:3:00(約)

初演データ (初演日)2018年
ブラームスによる2つの民謡風の歌(ブラームス作曲)

副題:1. 日曜日 2. 恋人の元へ
Title:Zwei Gesange (by J. Brahms)
Subtitle:1. Sonntag op.47-3 2. Der Gang zum Liebchen op.48-1

作曲年月日:2017年 6月
演奏時間:3:30(約)

初演データ (初演日)2017年6月22日
備考 月刊『バンドジャーナル』2017年7月号付録楽譜
ウィンド・アンサンブルのためのシャコンヌ(バッハ作曲)2017年版 (無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV.1004」より) 

Title:Chacconne for Wind Ensemble, 2017 edition (J.S.Bach)

作曲年月日:2017年
演奏時間:12:00(約)

出版社:イトーミュージック/ブレーン
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プログラムノート  1988年に抜粋版を作ってから30年近くたち、ようやく全曲版編曲完成と相成った。
 バッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV 1004」の終曲を飾る「シャコンヌ」は、多くの作曲家を刺戟し、J.ブラームス(1833-97)の(左手のみによる)ピアノ編曲、はたまた斎藤秀雄(1902-74)によるオーケストラ編曲など、さまざまな編曲がある。とりわけ、F.ブゾーニ(1866-1924)によるダイナミックなピアノ編曲は、バッハ作品の再創造として、広くレパートリーとなっている。そう、それこそが「編曲」なのだ。原曲の持ち味からの新たな創造。ならば、吹奏楽ならではの色彩を生かしたものが作れないか、と考えたのがきっかけだった。冒頭部分はトロンボーンのアンサンブルで、と、畏友である渡部謙一氏の一言でアイディアがわき、ブゾーニ版を参考にしつつシェーンベルクの音色旋律ふうな処理による細かいオーケストレイションを施した。
 なお、この作品はほぼ黄金分割比で成り立っている。最初の短調部分と続く長調部分の比、そして、その長調部分と最後の短調部分の比、これらが黄金分割に近い。(したがって、長調部分に入る段階でほぼ半分)。1988年版は、各部分をさらにほぼ黄金分割比に従ってカットしたものであった。4小節を単位として数えると全部で34回。原曲は64回。ただし今回の版は「全曲」版ではありながら、分割比を保つために若干のカットを施し、全部で61回とした。

A ニ短調 [1]-[31](31回)
 [1]-[19](19回)*
 [20]-[31](12回)

B ニ長調 [32]-[49](18回)
 [32]-[42](11回)*
 [43]-[49](7回)

A ニ短調 [50]-[61](12回)
 [51]-[57](7回)
 [58]-[61](4回)*

 「*」は、1988年とほぼ同一の部分。この部分については、ほぼ、再編曲の手を加えていない。
 ところでこの作品は、原曲のヴァイオリン独奏版などすべての版においてとかく重いテンポで演奏されがちなのだが、そもそもChaconneは舞曲であることを考え、全体に軽めのテンポに設定し、全体のテンポ設計をなるべく単純化した。
 楽器編成としては、1988年版とはほとんど同じであるが、コントラバス・クラリネットを追加した。
 初演は、2017年6月22日、洗足学園前田ホールにおける、洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウインド・アンサンブル(指揮:藤岡幸夫)。

初演データ (初演日)2017年6月22日
リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲(レスピーギ作曲)

副題:第1曲 イタリアーナ  第2曲 宮廷のアリア 第3曲 シチリアーナ 第4曲 パッサカリア
Title:Ancient Airs and Dances for Lute Suite No.3 (by O.Respighi)

原作者:O. レスピーギ
作曲年月日:2016年 12月
演奏時間:20:00(約)

出版社:イトーミュージック/ブレーン
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プログラムノート 初演のプログラムを一部改訂した解説

 レスピーギ(1879-1936)は、古い時代の作品を大切に研究していた。その成果として、J.S.バッハ(1685-1750)作品の管弦楽編曲や、M.チェスティ(1620-69)のイタリア古典歌曲〈Intorno all’idol mio(私の偶像である人の回りに)〉にもとづいた歌曲〈昔の歌に寄せて〉、少し時代は新しいがG.ロッシーニ(1792-1868)をもとにした〈風変わりな店〉〈ロッシーニアーナ〉などが挙げられよう。レスピーギの音楽はいつも、懐古趣味を思わせる。
 さて、リュート作品をもとにした3つの組曲がある。本日はその中の第3組曲をお届けする。弦楽オーケストラのために1931年に作曲。次の4曲からなり、第1、3、4曲は、ピアノ独奏編曲も行っている。

第1曲 作者不明:イタリアーナ(16世紀末)
第2曲 ジャン・バティスト・ベサール:宮廷のアリア(16世紀)
 ベサール(1567頃$301C1625頃)はフランスのリュート奏者、作曲家で医者。
第3曲 作者不明:シチリアーナ(16世紀末)
 日本のメディアでしばしば取り上げられることがあり、よく知られたメロディー。16世紀よりイタリアやイギリスで流行っていた〈Spagnoletta(スパニョレッタ)〉と呼ばれる音楽が原作。それをもとにジャイルズ・ファーナビー(1560-1640)による〈The Old Spagnoletta〉が「Fitzwilliam Virginal Book」の第289曲に収められている。
第4曲 ロドヴィコ・ロンカッリ:パッサカリア(1692)
 イタリアの貴族でありギター奏者であったロドヴィコ(あるいはルドヴィコ)・ロンカッリ(1654-1713)の〈スペイン・ギターのためのカプリッチョ〉第9組曲の〈パッサカリア〉が用いられている。

 本日は吹奏楽でお届けするわけだが、作品名(原題:Antiche Danze ed Arie per Liuto, Libera trascrizione per orchestra d’archi, Terzo Suite)をニュアンス正しく訳し、今回の吹奏楽版を、改めて「リュート曲に基づく昔の舞曲と歌曲集$301C管楽オーケストラのための自由な編作 第3組曲」と名付けてみる。
 レスピーギが「弦楽オーケストラのための」と書いているので、向こうを張って「管楽オーケストラ」。
 吹奏楽界で歴史的にも頻繁に行われてきている「管弦楽から吹奏楽への編曲」には、個人的にはほとんど興味がない。いかに吹奏楽で管弦楽と似たような音色が作り出せるか、というポイントで評価されるからだ。しかしそのような「代替物」では、吹奏楽の意義が無いではないか。編曲とは「再創造」であり、原作より魅力的なものを提示すべきだ。
 だから私が編曲する際には、吹奏楽とはまったく異なった編成(たとえばヴァイオリン独奏、ピアノ独奏など)からのものを好む。そこに個人的な演奏上の解釈を少しく織り込む。もし自分がピアノで演奏したらこんなふうにするなあ、といったアイディアを織り込む。作品から全く異なった魅力を引き出したい。それが吹奏楽の魅力へと繋がる。
 この作品は、もともとはリュート曲。それをレスピーギは弦楽オーケストラ作品として、世界を広げた。そしてこのたび「管楽オーケストラ」版を作るとは、なんと楽しいことだろう。弦楽器や管弦楽のファンに、おお、管楽オーケストラは面白いじゃあないか、と言わしめることができたら、これは編曲者冥利に尽きるというものだ。東京佼成ウインドオーケストラという極上のパレットは、存分に魅力的な音色を描き出してくれるだろう。
初演データ (初演日)2017年1月18日
(初演者)東京佼成ウインドオーケストラ 指揮:シズオ・Z・クワハラ
(初演場所)東京芸術劇場コンサートホール
委嘱者 東京佼成ウィンドオーケストラ
アヴェ・マリア(シューベルト作曲)

Title:Ave Maria (By F. Schubert)

作曲年月日:2016年

初演データ (初演日)2016年
われら海の子2015

副題:海のうたによるファンタジー
Title:Marine Fantasy 2015

作曲年月日:2015年 9月 25日
演奏時間:13:00(約)

12m45s
初演データ (初演日)2015年10月10日
(初演者)海上自衛隊音楽隊合同
(初演場所)横須賀芸術劇場
CDタイトル:われら海の子
レーベル・CD番号:ブレーン / BOCD-7611
CD備考:
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エルザの大聖堂への行列 (ワーグナー作曲)

副題:歌劇「ローエングリン」第2幕より
Title:Elsa's Procession to the Cathedral from 'Lohengrin'(by)

原作者:R. ワーグナー
作曲年月日:2015年 6月
演奏時間:8(約)

出版社:イトーミュージック/ブレーン
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プログラムノート R.Wagner(1813$301C1883)のオペラ「ローエングリン」(1850)第2幕第4場で、王女エルザが、騎士ローエングリンとの結婚式のために、大聖堂へと向かう際に奏でられる音楽である。
 F.Liszt(1811$301C1886)が1852年にピアノ独奏編曲を作っており、「Elsas Brautzug zum M$00FCnster」(S.445/2)と題された。
 1938年には、Lucien Cailliet(1891$301C1984)が吹奏楽編曲を行っており、オーケストラでは単独で演奏されることがないこの曲が、吹奏楽でこよなく愛されるきっかけとなった。
 そもそも、原曲の冒頭部分が管楽器のみのアンサンブルで成り立っており、F.Fennell(1914$301C2004)は、このようなオーケストラ曲での管楽器の扱い方を研究して「ウィンド・アンサンブル」を創設したということから、吹奏楽で取り上げるのに意義深い作品と言えよう。

 この編曲では、通常知られるフルートの独奏部分より8小節前から開始する(ここも管楽器のみの演奏。ただし、ハープによるアルペッジョは、グロッケンとヴィブラフォーンとに置き換えた)。
 第40小節までは、原曲と同じオーケストレイション。また、スコア冒頭に太字で書かれた楽器は、ほぼ一貫して原曲の管楽器パートと同じである。
 斜体字で書かれた楽器は、合唱パートを受け持っている。コルネットがソプラノ、フリューゲルホルンがアルト、そして、8声2群に分かれた男声合唱が、バリトンとユーフォニアムである。(これらをほかの楽器に置き換えることが可能。また、実際に合唱を入れての演奏も可能である)。
 第87小節から第99小節までは、私自身による創作。原曲のオペラではエルザの結婚相手である騎士の名を訊ねてはならぬ、ということへの不安を煽るシーンが繰り広げられ、それを思わせる音楽となっている。なお第87小節冒頭部分のベース・ラインは、原曲に同じ。
 第100小節からは、原曲の第2幕第4場の最後の部分に同じ。原曲ではハ長調で書かれているが、ここでは変ホ長調に移調した。バンダとして登場するトランペット10本も原曲と同じ。ライトモティーフの一つである白鳥のモティーフ(第106小節)が高らかに奏でられる。

 この編曲は、2015年6月24日、洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウィンド・アンサンブル(指揮:藤岡幸夫)による初演された。
初演データ (初演日)2015年6月24日
(初演者)洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウインド・アンサンブル
(初演場所)洗足学園前田ホール
献呈 (シューマン作曲)

副題:歌曲集『ミルテの花』より
Title:Widmung (by R. Schumann)
Subtitle:"Myrthen" Op.25-1

作曲年月日:2015年 5月
編成:2Fl. 2B♭Cl. Bass-Cl. A-Sax. T-Sax. Bar-Sax. 2Hrn. 2Cornet. 2Trb. Euph. Tub. Timp. 2Perc (optional: Piccolo 2Oboes 2Basoon Contrabass)

初演データ (初演日)2015年6月24日
(初演者)洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウインド・アンサンブル (指揮:藤岡幸夫)
(初演場所)洗足学園前田ホール
万霊節(R.シュトラウス作曲)

Title:Allerseelen (by R. Strauss)
Subtitle:All Soul's Day

原作者:R. シュトラウス
作曲年月日:2014年 11月
演奏時間:4:00(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
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プログラムノート  この歌は、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)の作品10の8曲からなる歌曲集の最後に置かれている。ヘルマン・フォン・ギルムの詩「最後の葉」による。リヒャルト18歳頃の作品。 参考までに、拙訳ながら詩を紹介しておこう。

テーブルに 芳しい木犀の花を置き
名残の赤いアスターも添え
さあもう一度 愛を語り合おう
 かつての五月のように
手をだして そっと握らせて
人に見られても いいじゃあないか
こっちを向いて 一度だけきみの 甘いまなざしを
 かつての五月のように
花は咲き 香っている 今日はどのお墓にも
一年にたった一日 そうこの日こそ 亡き魂が帰ってくる。
だからおいで ぼくの胸に そしてもう一度ぼくのものに
 だって、かつて五月にそうしたじゃないか
 そう、昔はそうしていたよね あの五月には

 「万霊節」とは、いわば日本のお盆のようなもの、いわゆるハロウィーンの翌日、死者の魂が帰ってくる日、11月2日ころである。このタイトルそのものが、何か死者に対するものであることを予感させるのだが、それは、この詩の第3節で「墓」という言葉が現れて明白となる。恋人は、おそらく既にこの世に無いのだ。失われた恋人に対して、もう一度愛を語り合おうと訴えかける切なさ。青年リヒャルト・シュトラウスはこれを、あえて明るい変ホ長調と、色彩的なハーモニーで描いた。
 原曲はピアノ伴奏。この曲を伴奏する際には、繊細かつ大胆な音色への配慮が不可欠である。そのテイストを十分に表現できるようなオーケストレイションを施した。特に、歌詞のイントネーションやフレージング、詩からくる曲調を重視した。メロディがさまざまな楽器に推移していくさまや、微細なアーティキュレイションの違いなど、是非、スコアを読み込んでもらいたい。
 また、原曲には、テンポの変化は書かれていないが、参考までにいくらか書いておいた。これらは、すべて詩のニュアンスやハーモニーから来るもの。本来は、ほぼ in Tempoで演奏されるべきところが、若干の「揺れ」が生じているというわけ。作為的なテンポ変化とならないよう、自然な音楽の流れを心がけてほしい。
原曲は、9小節から始まっている。(ただし、和音の配置を変更してある)。冒頭8小節は、この詩で何度もリフレインされる「wie einst im Mai」をもとにして作られている。面白いことに、リヒャルトはこの詩に毎回異なったメロディを付けており、それが聴き手にさまざまな意味合いを感じさせている。そのあたりもよく感じ取りたい。
 この編曲は、2014年12月7日、増井信貴指揮、洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウィンド・アンサンブルにより初演。

初演データ (初演日)2014年12月7日
(初演者)グリーン・タイ ウインド・アンサンブル 指揮:増井信貴
(初演場所)洗足学園前田ホール
交響的舞曲 第1楽章 (ラフマニノフ作曲)

Title:Symphonic Dances : MovementⅠ (by S. Rachmaninov)

原作者:Sergei Rachmaninov
作曲年月日:2014年 6月
演奏時間:11(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
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プログラムノート  ピアニスト、作曲家として知られたS.ラフマニノフ(1873-1943)はロシアに生まれ、1917年以降はアメリカに暮らした。1940年にニューヨークで作曲されたこの「交響的舞曲」は、ラフマニノフ自身、これが最後の煌めきになるだろうと予感していた。
 3楽章からなる管弦楽作品として構想されたが、まず2台ピアノのための版が8月10日に完成(op.45a)。ラフマニノフ宅の私的な演奏会で、ウラディミール・ホロヴィッツとラフマニノフにより演奏された。その後、管弦楽編曲を行い、10月29日に完成。翌年の1月3日に初演された。
 私が担当するグリーン・タイ ウィンド・アンサンブル(GWE)では、原則として管弦楽作品から編曲された吹奏楽作品は取り上げない。管弦楽と同じような大人数を擁する吹奏楽では、往々にして管弦楽とどれだけ同じようなサウンドがするか、という点で評価されがちだからだ。それでは管弦楽の代替物でしかなく、吹奏楽そのものの意義が薄れてしまうと思うからである。一方このラフマニノフの作品は、管弦楽版のみならず、2台ピアノ版でも広く愛好されている。室内楽曲として楽しまれる2台ピアノ版は、管弦楽より貧弱だとは決して言えまい。2人の奏者が対峙することで醸し出すスリリングな表情、打鍵楽器としてのピアノの魅力、想像力としての音色の魅力の世界へとわれわれを誘う。
 さて、たとえばほんとうの原曲である2台ピアノ版に基づいて吹奏楽編曲を施せば、管弦楽とは異なった色彩が味わえるのではないか。そう考え、本日のコンサートのために新編曲を作った。もちろんラフマニノフの意図とは異なったものとなるだろう。しかしそれが編曲の妙味であり、ある意味、私自身の作品であるとも言える。吹奏楽ならではの色彩を味わっていただきたい。
 楽器編成としては、オーボエ2本、バスーン2本を含み、サクソフォーン・セクションは、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンがそれぞれ2本ずつ、さらにバスが加わる。金管楽器にはコルネットとバリトンを用いた。ラフマニノフの管弦楽版に含まれているピアノは用いず、あくまで管楽器主体の編曲となっている。
 この第1楽章は、たとえばピアノ練習曲集「音の絵」op.39の中の終曲に似た行進曲ふうな味わいを持ちつつも、中間部のラフマニノフ独特の甘美なメロディが印象深い。
 白鳥は死の直前に美しく鳴く、と古いギリシャ神話は言う。ラフマニノフの「白鳥の歌」を、さて、みなさんはどう聴きますか。

 本日、大滝実先生を客演指揮にお迎えしました。私の編曲にはさぞかし驚かれはたまた呆れ返っておられるかとも推測するのですが、どのような演奏に仕上げていただけるか楽しみにしていると共に、厚く感謝申し上げます。

(GWE企画運営責任者・作曲家 伊藤康英)
初演データ (初演日)2014年7月21日
(初演者)グリーン・タイ ウインド・アンサンブル 指揮:大滝実
(初演場所)洗足学園前田ホール
カルメン・ファンタジー(ビゼー作曲/伊藤康英版) [Vn. Band]

副題:ヴァイオリンと吹奏楽のための
Title:Carmen Fantasy (by G. Bizet) for Violin and Wind Band

原作者:Georges Bizet
作曲年月日:2005年 11月 17日
編成:Vn.(Solo) Picc. Fl. Ob. Ehorn. Bn.Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc. Hp.

プログラムノート  ビゼーのオペラ「カルメン」には、有名なメロディが多い。ここからいくつかのメロディを選び出そうとすると困ってしまうほどだ。このファンタジーで取り上げたメロディも、そのほとんどをみなさんご存じのことだろう。
 もともとはフルートとピアノのために作曲。この編成のためには、ボルヌの作曲した「カルメン・ファンタジー」がつとに有名であり、かつて私の友人とのコンサートでボルヌの「カルメン・ファンタジー」をやろうと思い、チラシに「カルメン・ファンタジー」と勝手に書いてしまった。ところが、友人は、どうやらボルヌの作品を好ましく思わなかったらしい。そこで一計を案じた。そういえばちらしには作曲者名を書いておかなった。タイトルがおなじならばチラシに偽りはない。そんなわけで、伊藤康英版「カルメン・ファンタジー」ができあがった。
 本日は、新たにヴァイオリン・パートを書き下ろし、吹奏楽のサウンドとともにお楽しみいただきます。
(ヴァイオリン版初演プログラム/伊藤康英)
初演データ (初演日)2005年12月11日
(初演者)水野佐知香(Vn.)洗足学園音楽大学フレッシュマン・ウィンド・アンサンブル、伊藤康英指揮 (洗足学園前田ホール)
交響的カンタータ《展覧会の絵》 (ムソルグスキー作曲)

副題:二台八手ピアノ、サクソフォーン四重奏、混声合唱と吹奏楽のための
Title:Bilder einer Ausstellung (by M. P. Mussorgsky)
Subtitle:Symphonic Cantata for 2 Pianos 8 Hands, Saxophone Quartet, Chorus and Band

原作者:Modest Petrovich Mussorgsky
作詞者:シラー、ゲーテ、ミュラー、カエサル、プロペルティウス、サルスティウス、ウェルギリウス、杜甫、李白、尹東柱、伊藤康英
作曲年月日:2005年 9月 13日
編成:2Pf.(8Hands) Band 4Sax.(SATB) Mix-chor.
演奏時間:35:00(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
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プログラムノート この作品は、ムソルグスキー作曲の組曲「展覧会の絵」をベースに、さまざまな言語のテキストの合唱が、戦争や平和を歌い上げるカンタータに仕立てたものである。

 こういう作品を作った経緯などは次のとおりである。

 「展覧会の絵」は、ぼくはあまり好きな曲ではなかった。何より音楽の唐突な変化や、貧弱そうに思える構成感や、音楽のいびつさが気に入らなかったのだ。それでも、いつかはこの曲を吹奏楽に編曲しなくては、と思った。なぜならば、オーケストラの世界にはラヴェルの名編曲があるが、吹奏楽の世界には、そのラヴェルをもとにした編曲がほとんどだったからだ。オーケストラを聴くより吹奏楽版できいたほうが面白い、そう言われるような編曲があったなら、吹奏楽はオーケストラに追随するジャンルではなく、対等の立場に立てるのではと思ったからだ。
 如何にしてラヴェルを打倒するか。ラヴェルより優れたものが作れるか、と永らく思案していた。
 さて、2005年に、たまたまこの曲を編曲してくれという依頼が入った。さまざまなプレイヤーが登場するコンサートで、最後に全員で演奏するために、ということなのだが、その編成たるや、シエナ・ウィンド・オーケストラ、トルヴェール・クヮルテット、東京混声合唱団(大阪での初演では、大阪音楽大学カレッジ・オペラハウス合唱団)、さらにはシュー・ツォン、田部京子、ハエ=スン・パイク、横山幸雄というピアニスト4名というものだった。これは面白いものができるかもしれないと思った。なにしろ合唱が入ったら、そのサウンドたるや壮麗なものになるに違いない。
 ところが、合唱が入るからには、テキストはどうする? という問題にぶち当たった。
 理想としては、ロシア語で誰か作詞してくれればよいのだけど、あいにくぼくはロシア語のアーベーヴェーすらちゃんと読めない。それではドイツ語? いや、そういえばこの原曲には、いろいろな言葉でタイトルが付けられているじゃあないか。そこでテキストは、自ら様々な詩人のものから採ることにした。
 たった一つの地球の上に、さまざまな世界(国)がある。世界をも一つに(自分のものに)しようとしたために戦争が起きたのではないか。世界にはさまざまな人がいる。さまざまな国がある。それを互いに理解しあうことこそが、ほんとうの意味で世界が一つになる(=平和になる)ということなのではないか。
 たとえばの話、大阪でエレベータに乗ると、みんな右側に立っているんですね。東京だったら左側だ。そんな瞬間、ふと自分は違う国に来たような錯覚に陥る。そうか、大阪は違う国なんだ。面白いなあ。そう気がつき始めたときに、大阪の面白さがほんとうにわかり始め、理解しあうことができる。日本にだってさまざまな国があって、みんな違うのだ。
 これをモットーとして、戦争のこと、平和のこと、さまざまな言語による詩を集めてきた。

 「古城 (Il vecchio castello)」からは、杜甫の「国破れて山河在り」の五言絶句が連想された。
 ゲーテの詩も使いたいと思った。
 シューベルトの「冬の旅」に出てくるミュラーの一節も、恐ろしくも気がかりな言葉だった。
 ベートーヴェンが第9交響曲で使ったシラーの詩も使いたかった。(ベートーヴェンは、シラーの詩全部を使ったわけではなく、部分的に、それも順を入れ替えたりもしている。それならば、と私も、この詩から気に入ったフレーズを選び出した)。
 ラテン語で原タイトルが書かれているでは、ラテン語の格言を当てはめたかった。
 それらを、冒頭に歌われる日本語「地球は一つ」というという言葉で括りたかった。そうして、4つの言語、10人の詩人(+1人)が集まった。

 さて、吹奏楽部分の編曲に際して、一つ気がついたことがあった。これまで、ラヴェルを意識して、ラヴェルよりいいものを、とか、ラヴェルがこうやったからその方法は避けなくては、といった考えが間違いだということ。つまり、ラヴェルは関係ありません、という方法を採るべきなのだ。これまでにもこの曲の吹奏楽編曲はいくつかあっただろう。ラヴェルを意識するあまり、そしてラヴェルに反駁すべく、突拍子もない楽器に役割を与えるなんてことは愚の骨頂だ。たとえば冒頭は普通に考えたらトランペットのファンファーレだろう。ならばトランペットに置けばいい。おや、ラヴェルもトランペットなんだ。それでいい。
 もう一つ。この曲を編曲していて、ロシアの大地のムソルグスキーの、力強い声に呪縛された感じがした。ラヴェルのオーケストラ編曲が「フランスふう」と評されているが、ようやくその意味が分かったような気がした。吹奏楽で表現することで、ムソルグスキーのかなり乱暴でさえある声に忠実に従えると思う。

 初演は、2005年9月27日、大阪のザ・シンフォニーホールにて、本名徹次氏の指揮。
 2010年版の初演は2010年11月27日、洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウィンド・アンサンブルのコンサートにおいて、洗足学園音楽大学合唱団(合唱指揮:辻秀幸氏)の協力を得て、初演と同じ本名氏の指揮にて。また、12月19日には、洗足学園音楽大学の「合唱の祭典」にて、伊藤康英の指揮にて再演。
 2010年版に際していくつかの改訂を施した。誤謬を正したのは言うまでもないが、他にハープ・パートを加えたこと、韓国語の詩を追加したことである。
 戦争や平和を考えたときに、今、韓国と北朝鮮との問題は避けては通れない。そこで韓国語の詞を追加しようとしたときに、1945年に拘留先の日本で非業の死を遂げた若い詩人・尹東柱を知った。北朝鮮の問題もさることながら、戦時中の日本と朝鮮半島との軋みも、我々日本人の大きな過去である。この詩人の、最も知られている詩から引用し、新たに合唱パートに追加することとした。時あたかも、終戦からちょうど65年の暑い日に、平和への祈りを込めて。

2010年8月15日 伊藤康英
初演データ (初演日)2005年9月27日
(初演者)指揮:本名徹次(合唱指揮:奥村哲也) シエナ・ウインド・オーケストラ ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団  ピアノ:シュー・ツォン、田部京子、ハエ・スン・パイク、横山幸雄、 サクソフォーン四重奏:トルヴェール・クヮルテット
(初演場所)「アジアのスーパーガラコンサート2005」(ザ・シンフォニーホール/大阪)
カルメン・ファンタジー(ビゼー作曲/伊藤康英版)  [Fl. Band]

副題:フルートと吹奏楽のための
Title:Carmen Fantasy for Flute and Wind Band (by G.Bizet)

原作者:Georges Bizet
作曲年月日:2001年 04月 11日
編成:Fl.(Solo) Picc. Fl. Ob. Ehorn. Bn.Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc. Hp.

プログラムノート ビゼーのオペラ「カルメン」には、有名なメロディが多い。ここからいくつかのメロディを選び出そうとすると困ってしまうほどだ。
このファンタジーで取り上げたメロディも、そのほとんどをみなさんご存じのことだろう。
もともとはフルートとピアノのために作曲。この編成のためには、ボルヌの作曲した「カルメン・ファンタジー」がつとに有名であり、かつて私の友人とのコンサートでボルヌの「カルメン・ファンタジー」をやろうと思い、チラシに「カルメン・ファンタジー」と勝手に書いてしまった。ところが、友人は、どうやらボルヌの作品を好ましく思わなかったらしい。そこで一計を案じた。そういえばちらしには作曲者名を書いておかなった。タイトルがおなじならばチラシに偽りはない。そんなわけで、伊藤康英版「カルメン・ファンタジー」ができあがった。
委嘱者 東京佼成ウインドオーケストラ
威風堂々より -金管合奏のために- (エルガー作曲) [3Cornet Hrn. Trb. Euph. Perc.]

Title:From "Pomp and circumstance" for brass ensemble (By E. Elgar) [3Cornet Hrn. Trb. Euph. Perc.]

原作者:Edward Elgar
作曲年月日:2001年 1月 20日
編成:3Cornet. Hrn. Trb. Euph. Perc

若い力 (高田信一作曲)

Title:Wakai-chikara (by S. Takada)
Subtitle:for National Athletic meet

原作者:高田信一
作詞者:佐伯孝夫
作曲年月日:1999年 06月 23日
編成:Picc. Fl. Ob. Bn. Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc.

備考 2000年国体式典音楽使用曲(富山) JASRAC 出9909417-901
ラプソディ・イン・ブルー (ガーシュウィン作曲) [Pf. Band]

副題:初演のジャズバンド版に基づく吹奏楽用編曲
Title:Rhapsody in Blue (by G. Gershwin)

原作者:George Gershwin
作曲年月日:1998年
編成:SoloPf. 3Fl. Ob. SoloCl. 4Cl. Bas.Cl. Sop.Sax. AltoSax. Ten.Sax.Bar.Sax. 3Hrn. 2Trp. 3Trb. Euph. Tub. Cb. Perc.

プログラムノート 「この編曲について」
  1924年2月に初演されたこの曲は、ホワイトマン・バンドの委嘱によるものだった。わずかに2週間ほどでガーシュウィンは2台ピアノのために作曲。それをグローフェ(1892-1972)がオーケストレーションを施した。そのときの編成は次のとおり。
  
  8人のヴァイオリン、コントラバス、3人の木管奏者(①Bbクラリネット、バス・クラリネット、オーボエ、ソプラノとアルト・サクソフォーン持替、②アルト、ソプラノ、バリトン・サクソフォーン持替、③テナー、ソプラノ・サクソフォーン持替)、トランペット2、トロンボーン2、ホルン2、チューバ、ティンパニ、打楽器、バンジョー、チェレスタ、ピアノ(独奏以外にもう一台)。
 
  その後1926年にグローフェはオーケストラへ編曲。また37年には吹奏楽に編曲。これは、吹奏楽での演奏に際して通常用いられている楽譜で、実際にはアメリカの大編成用のバンド向きの編曲(ピアノ無し)となっている。そして、ガーシュウィンの死後、1942年にグローフェは再度オーケストラへ編曲した。これが現在通常にきかれる演奏である。
  この曲の度重なる編曲により、あるいは演奏を重ねるうちに、原曲の姿が少しずつ変わっていったことは否めない。
  たしかにオーケストラに編曲されることでこの曲は、立派に「クラシック」の仲間入りを果たすことができ、20世紀の「クラシック」の重要なレパートリーとなった。しかし、この曲の現在しばしば聴かれる演奏が、あまりに「クラシックのピアノ協奏曲」然としては居過ぎないか。
  これが、私がこの編曲を新たに作った最大の理由である。

  初演のジャズバンド版の、グローフェによる手書きファクシミリ譜が出版されているが、これには、とにかく初演に間に合わせるための徹底的な省略記号の使用や書きなぐり、書法の細部の不統一がみられる。グローフェは、初演に際して気掛かりだったところ、あるいは演奏を重ねるたびに生じた演奏上のニュアンスなどをスコアに書き入れ、それを編曲のたびに楽譜に固定したのだろう。そのために、音楽に表現力の深さは感じられるようになったが、しかしその一方で、初演に向けてとにかくスコアを書き飛ばしていった、あのエネルギーが失われてしまった。
  ちなみに、この曲の演奏は、現在では18分余りかかることになっているが、ガーシュウィンの演奏は、概ね15分程度である。

  この版は、ジャズバンドのためにグローフェが最初にオーケストレーションした手書きファクシミリをもとに、いくつかの明らかな誤りを直し、加えて、私自身の演奏へのアイディアをいくつか加えたものである。スコア中の[]書きの指示は、現在の管弦楽版によるもの。その違いも確かめつつ、新たな、そして最もオリジナルに近い《ラプソディ・イン・ブルー》の姿を見つめてほしい。
  また、演奏に際しては、市販されているジャズバンド版による演奏を聴かれることをお薦めする。
  なお、一言付け加えるに、オーケストラでの演奏よりも、この版での演奏の方が、よりオリジナルに近いものである。 (伊藤康英)
  
  
初演データ (初演日)1998年12月13日
(初演者)薔薇崇師ウインドシンフォニー、伊藤康英(Pf.)、塩谷晋平指揮(江戸川区総合文化センター)
備考
CDタイトル:交響詩「時の逝く」 伊藤康英吹奏楽作品集
レーベル・CD番号:CAFUA RECORDS(CACG0015)
CD備考:
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交響曲第5番 ニ長調 作品47「革命」(ショスタコーヴィチ作曲)

Title:Symphony No.5 (by D. Shostakovich)

原作者:Domitori Shostakovich
作曲年月日:1995年
演奏時間:45:00(約)

プログラムノート 「ショスタコの5番」編曲にあたって。

 ここに1枚のピアノのCDがある。ホロビッツ・アンコール曲集と銘打ったこのCDには、彼自身の編曲による「星条旗よ永遠なれ」などが収められており、一人では到底弾くことができないと思われるほどの超絶技巧性を発揮しているかと思えば、原曲の吹奏楽では不可能な繊細な音色をきくこともできる。
 このように原曲を書き替え、その楽器の面白さを十分に生かす、これが「編曲」の楽しさである。しかし、吹奏楽の世界では若干意味が異なる。「原曲のオーケストラにどれだけ近い音を出せるか」ということが編曲の大きな使命とされ、善し悪しを決める重要なポイントとなる。下手に原曲の響きと異なったオーケストレイションをしようものなら、即座にそれは「欠陥品」との宣告を受ける。
 「ショスタコの5番」。この曲は大好きだった。打楽器を担当していた中学時代に、あの有名な第4楽章冒頭のティンパニのソロを叩いては悦に入ったものだった。すると途中からトロンボーンかだれかがメロディを吹いてくれた。そうでない時は独りで歌っていたかもしれない。まさに自分の宝物のような曲だった。その曲を編曲するとは何とも不思議な気分だった。しかし、今またスコアを隈無く見渡す機会ができたことをとても嬉しく思う。結果、私とほぼ同じ齢にして作曲されたこの曲の、私自身の見方が少々変わってきていることに気が付いた。また、オーケストレイション上の疑問点もいくつか感じられるようになった。
 さて編曲にあたって、楽器編成を通常とは異なるものにした。これは私にとって初めての試みである(とはいえ、このバンドでは常識的な編成だったらしい)。編成表は別欄を御覧いただきたい。主な特徴は、Bbクラリネットの人数を減らし低音を増強したこと、サクソフォーン群の拡大、フリューゲルに定席を持たせたことなどであり、これによってどれだけの音色の変化をもたらすかを、今回私自身の課題とした。また、「佼成」だからこそ、オーケストレイションは必要以上に厚くはしないよう心掛けた。
 ところで一番問題となったのは3楽章である。この楽章は、原曲では金管楽器が必要されておらず、他の楽章と全くの別世界を創り上げる。それをどのように表現したらよいのか?この楽章の開始部分は、大方の予想とは異なる楽器構成で始まる。そして原曲とは似ても似つかぬ響きになるだろう。しかしそれは、ウィンドアンサンブルへの編曲の楽しさとなってくる。
 ……今回の私の編曲には、「欠陥品」の烙印が待ち受けている。(初演プログラム/伊藤康英)
初演データ (初演日)1995年3月16日
(初演者)東京佼成ウインドオーケストラ
(初演場所)東京芸術劇場
委嘱者 東京佼成ウインドオーケストラ
CDタイトル:ロシアン・シンフォニーズ ~フレデリック・フェネル シリーズ
レーベル・CD番号:佼成出版社 / KOCD-3574
CD備考:
別れの曲 (ショパン作曲)

副題:合唱と吹奏楽のための
Title:Etude op.10-3 for Chorus and Band (by F. Chopin)

原作者:Frederic Chopin
作詞者:荒井 間佐登
作曲年月日:1994年 11月 06日
編成:Fl. Ob. Bn. Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Timp. Perc. F-chor.

日本サッカーの歌 (坂本龍一作曲)

Title:The Japanese Soccer Anthem (by Sakamoto, Ryuichi)

原作者:坂本龍一
作曲年月日:1994年
編成:2Fl. Picc. Ob. Bsn. EbCl. 3BbCl. A.Cl. B.Cl. Asax. Tsax. Bsax. 4Hrn. 3Trp. Euph. Trb. Tub. Cb. Timp. Perc.アルト・クラリネットとファゴットは省略可。オーボエも省略して、小編成に対応することもできる.
演奏時間:5:00(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
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プログラムノート ●「日本サッカーの歌について」(1994年12月15日初版の解説)
坂本龍一氏がこの「日本サッカーの歌」のメロディを書いた。
西暦2002年にワールドカップを日本に招致しようという、そのためにである。そして、今後、サッカーを愛するすべての人たちに歌ってもらいたいとのこと。近く、歌詞が付せられるだろう。そのあかつきには、この吹奏楽譜とともに、さあ、高らかに歌おうではないか!

演奏に際しては、以下のことに注意していただきたい。
 ○トランペット・パート、特に第一奏者は、C管やピッコロ・トランペットなどを使って、明るく仕上げるとより効果的である。
 ○打楽器は4人で演奏可能だが、持ち替えが困難である。適宜分担しての演奏をおすすめする。
 ○アルト・クラリネットとファゴットは省略可。オーボエも省略して、小編成に対応することもできる。
 ○全曲の構成は以下の通り。
前奏に続き、練習番号13からメロディ、そして41からがいわゆるサビ。間奏をはさんでメロディが繰り返され、最後にサビの部分が半音上がってリフレインされて後奏となる。音楽をより効果的に盛り上げるために、オーケストレーションを毎回変え、そして、テンポも次第に加速するように編曲した。したがって一気に全曲を演奏し通してほしい。
 
備考 日本サッカー協会の委嘱で坂本隆一氏が作曲し、吹奏楽編曲を伊藤康英が担当。この吹奏楽版は、現在でも、天皇杯全日本サッカー選手権大会の式典などで演奏されている。
CDタイトル:「ぐるりよざ」伊藤康英作品集
レーベル・CD番号:ブレーン / BOCD-7402
CD備考:
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聖ヨハネ祭の夜 ~歌劇『ソロチンスクの市』より (ムソルグスキー作曲)

Title:"St. John's Night" from "The Fair at Sorochinrzy" (by M. P. Mussorgsky)

原作者:Modest Petrovich Mussorgsky
作曲年月日:1992年 9月 6日
編成:2Fl. Picc. Ob . Bsn. E♭Cl. 3B♭Cl. S-Sax. 2A-Sax. T-Sax. Bar-Sax. 4Hrn. 3Trp. 3Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. 4Perc
演奏時間:11:00(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
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プログラムノート   ムソルグスキーは、いわゆる「禿山の一夜」のモティーフを、かなり気に入っていたのだろうか。生涯にわたり何度も書き改めている。そして最後に書かれたのが、この歌劇『ソロチンスクの市』の一場面としてである。残念ながら歌劇は未完成に終わり、残されたのは合唱を伴うピアノ連弾の形であった。現在知られるリムスキー=コルサコフ版の「禿山…」とは随所で異なった音の使い方をしており、一見武骨に見えるムソルグスキーの力強い響きに溢れた、魅力的な音楽となっている。
  私は、ムソルグスキーが遺したピアノ連弾版に従って、吹奏楽編曲を行った。ロシア的な力強さを吹奏楽でどこまで表現できるかが、私にとっての課題であった。したがって、当然ながらコルサコフ版とは楽器の使用方法も異なり、また、ムソルグスキー自身による「原典版」などともはるかに異なる。私自身のイメージにより仕上げた。(伊藤康英)
CDタイトル:交響詩「時の逝く」 伊藤康英吹奏楽作品集
レーベル・CD番号:CAFUA RECORDS(CACG0015)
CD備考:
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交響曲  第4楽章 (矢代秋雄作曲)

Title:Symphonie pour grand orchestre-4eme mouvement (by Yashiro, Akio)

原作者:矢代秋雄
作曲年月日:1991年 10月 19日
編成:Picc. Fl. Ob. Bn. Cl. Sax. Hrn. Corn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc.

プログラムノート  1976年、46才で急逝した矢代秋雄氏が、フランス留学帰りの第一作として、1958年に作曲、日本の音楽界に問うた衝撃の作品。全曲を構成する主要動機の執拗な展開が、この第4楽章にもみられる。形式としては、アダ
ージョの導入部に引き続き、フーガ的な発展を見せる主部、そしてコラールをはさんでコーダから成り立っているが、矢代氏自身によると、この主部は再現部が極端に短いソナタ形式であるという。
 1979年に第4楽章が吹奏楽に編曲されて以来、今や吹奏楽の欠かせぬレパートリーとなった。しかしながら、コンクール用編曲ということもあって、部分的なカットが施されたり、オーケストレーション上の疑問が感じられたため、私が昨年、全く新たにこの楽章の編曲を行った。今日はその編曲の初演となる。
初演データ (初演日)1992年4月1日
(初演者)浜松北高等学校吹奏楽部
備考 オリジナルのオーケストラに基づき、チェレスタとハープ2台を加えることも可能。
音の絵 (ラフマニノフ作曲)

Title:Etudes-Tableaux (by S. Rachmaninov)

原作者:Sergei Rachmaninov
作曲年月日:1990年 06月 11日
編成:Band

「ヴェニスの謝肉祭」による変奏曲 [Euph. Band]

Title:Variations from "Carnival of Venice" [Euph. Band]

原作者:J. B. Arban
作曲年月日:1988年 10月 05日
編成:Euph. Picc. Fl. Ob. Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Bari(opt). Tub. Cb. Timp. Perc.

備考 1989/7/18改訂
CDタイトル:ユーフォニアム・コンチェルト/牛上隆司
レーベル・CD番号:ブレーン / OSBR-22045
CD備考:ヴェニスの謝肉祭(吹奏楽版)
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ヴォカリーズ (ラフマニノフ作曲) [Sax. Band]

Title:Vocalise op.34-14 (by S. Rachmaninov) [Sax. Band]

原作者:Sergei Rachmaninov
作曲年月日:1988年 09月 27日
編成:A-Sax. BandPicc. Fl. Ehrn. Cl. Sax. Trn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc.

シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV.1004」より)(バッハ作曲)

副題:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番ニ短調BWV.1004より
Title:CHACONNE from "PARTITA NO.2" for Solo Violin in D minor BWV.1004 (By J.S.Bach)

原作者:J.S.バッハ
作曲年月日:1987年
編成:Picc. Fl. Ob. Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc.
演奏時間:8:30(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
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プログラムノート   シャコンヌとは古い舞曲の形式であり、変奏曲の一種だが、バッハはこの形式を借りて、ヴァイオリン一台のみながら延々10数分に及ぶ作品を作り上げた。これは後の多くの作曲家を刺激したようだ。ブラームスや、ブゾーニのピアノ編曲があるし、弦楽オーケストラで演奏されたりもする。それから私もこの夏にはサクソフォーン編曲を行った。
 この吹奏楽編曲は、1987年に作ったもの。冒頭部はトロンボーン3本で始めたら、との友人の一言で、ああなるほど、これは面白いものになりそうだ、と編曲にとりかかった。
 当時、シェーンベルグの音色旋律などに興味を持っていたため、かなり細かい仕掛けを施したオーケストレイションとなっている。なおこの編曲は全曲ではなく、この曲の構成比(黄金分割)を守りつつ全体を6割強に縮めてある。(2005年12月シンフォニック・ブラスカペレ演奏会/伊藤康英)

 元来ヴァイオリン独奏曲であるこの曲を、ブゾーニはピアノ独奏用に編曲した。ブゾーニの作品とも言えるような、ピアノの特性を生かした作品である。そして私は、ヴァイオリン曲でもピアノ曲でも、あるいはオーケストラ曲でもない、吹奏楽ならではのサウンドを求めてこの編曲を作った。もしかしたら、原曲を調べることはここではあまり意味を成さないかもしれない。むしろシャコンヌの本来の姿―スペインの古い舞曲―を彷彿とさせたり管楽器のアンサンブルならではの(むしろオルガン近い)重量感を持たせたり、そして何より、音色のパレットを目一杯広げてみたものである。
 冒頭はトロンボーン3本による美しいハーモニー。私の友人からのサジェスチョンにより、この曲の編曲のイメージができあがっていった。
 なおこの編曲では、バッハの原曲を約半分のサイズに縮めた。が、各部分のバランスを崩さないように心掛けた。すなわち、ニ短調―ニ長調―ニ短調という3つの部分はそれぞれ黄金分割比を保つようにしたのである。(初演プログラム/伊藤康英)
初演データ (初演者)筑波大学吹奏楽団
CDタイトル:筑波大学吹奏楽団 全日本吹奏楽コンクールの歴史’83~’95
レーベル・CD番号:Fontec (FPCD3411/2)
CD備考:
「二つの行進曲」――ピアノのための練習曲集「音の絵」作品39より (ラフマニノフ作曲)

Title:2 Marches from Etude-tablaux op.39 (by S. Rachmaninov)

原作者:Sergei Rachmaninov
編成:Picc. Fl. Ob. Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc.

プログラムノート   ラフマニノフはピアニストとしても名高く、数々の自作曲を自ら初演している。ピアノのための練習曲集「音の絵、作品39」は、1916年から1917年にかけて書かれた。至難なピアノのテクニックもさることながら、中には明らかにオーケストラなどの色彩を意識した作品もいくつかあり、吹奏楽への編曲を思い立った次第である。
  曲は第7番ハ短調からの一部と第9番ニ長調から成り立っている。俗に第7番は「葬送行進曲」、第9番は「行進曲」と呼ばれることがある。なお、レスピーギによってオーケストラ編曲も行われている。
みんなで第九 (ベートーヴェン作曲)

副題:1000人の大合奏
Title:Beethoven for us (by L. Beethoven)

原作者:Ludwig van Beethoven
演奏時間:3:30(約)

CDタイトル:伊藤康英 2007 ~伊藤康英吹奏楽作品集
レーベル・CD番号:イトーミュージック/IMCD0707
CD備考:
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われら海の子

Title:Marine Fantasy for Bands

演奏時間:10:00(約)

初演データ (初演日)2009年7月20日
(初演者)フレッシュマン・ウィンド・アンサンブル、グリーン・タイ ウィンド・アンサンブル、ブルー・タイ ウィンド・アンサンブル、ホワイト・タイ ウィンド・アンサンブル, 指揮:大友直人
(初演場所)「洗足学園音楽大学吹奏楽の祭典」サントリー大ホール
委嘱者 洗足学園音楽大学
故郷(ふるさと)(岡野貞一作曲)

Title:Furusato (by T. Okano)

原作者:岡野貞一
演奏時間:2:30(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
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プログラムノート 2011年11月26日、洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウィンド・アンサンブルと台湾新竹教育大学吹奏楽団との合同演奏。「希望と絆」をテーマに掲げた洗足のFUYUON!2011(冬の音楽祭)のアンコールより。唱歌「故郷」をごくシンプルに吹奏楽用に編曲したものです。
ブンガワン・ソロ (マルトハルトノ作曲)

Title:Bengawan Solo (by G. Martohartono)

原作者:Gesang Martohartono
演奏時間:5:00(約)

プログラムノート ブンガワンソロは有名なインドネシアの歌で、インドネシア・ジャワ島中部を流れる「ソロ川」を意味してる。1940年ごろにグサン・マルトハルトノによって作曲され,
アジアで広く歌われるようになった。日本でも戦後間もなくから知られるところとなり、音楽の教科書にも掲載されている。
伊藤康英がシンガポールWest Windsのコンサートのために吹奏楽編曲し、2010年3月6日にシンガポールのエスプラネードホールで初演された。
シンガポールで知られる菓子会社「ブンガワンソロ」が、West Windsのスポンサーになっているところから、West Windsがスポンサーへの感謝の気持ちを込めてこの編曲を依頼した。そして、ブンガワンソロの会社社長夫妻にこの編曲は献呈されている。
この吹奏楽編曲は、「ブンガワンソロ」のメロディがさまざまなスタイルに変奏されていく。
初演データ (初演日)2010年
吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調 (ホルスト作曲/伊藤康英校訂)

副題:ホルストの自筆譜などに基づく伊藤康英校訂版
Title:"First Suite in E-flat" for Military Band (by G. Holst)

原作者:Gustav Holst
編成:Picc. Fl. Eb Cl.1&2(2nd ad lib.) Ob.1&2(ad lib.) Bb Solo Cl. Bb Cl.1,2&3 A. Sax.(ad lib.) T. Sax.(ad lib.) B. Cl.(ad lib.) Bsn.1&2(2nd ad lib.) Cor.1&2 Trp.1,2&3(ad lib.) F Horns 1,2 Trb.1&2(2nd ad lib.) B. Trb. Euph. Baritone(ad lib.) Tuba(div.) St. Bass(ad lib.) Timpani(ad lib.) B.D. Cym. Side Drum Tri. Tamb.
演奏時間:11:00(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
楽譜備考:$00A0大英図書館所蔵のホルスト自筆譜をはじめ各種の編曲版を参照し、自筆書の持ち味を生かしつつも 現在のバンドの実情に合った演奏可能な楽譜。
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出版社:日本楽譜出版社
楽譜備考:大英図書館所蔵のホルスト自筆譜を伊藤康英が校訂した原典版ポケットスコア。
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CDタイトル:なにわ《オーケストラル》ウィンズ2013
レーベル・CD番号:Brain Music/BOCD-7359
CD備考:
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吹奏楽のための第2組曲 ヘ長調 (ホルスト作曲/伊藤康英校訂)

副題:ホルストの自筆譜などに基づく伊藤康英校訂版
Title:"Second Suite in F" for Military Band (by G. Holst)

原作者:Gustav Holst
編成:Picc. Fl. Eb Cl.1&2(2nd ad lib.) Ob.1&2(ad lib.) Bb Solo Cl. Bb Cl.1,2&3 A. Sax.(ad lib.) T. Sax.(ad lib.) B. Cl.(ad lib.) Bsn.1&2(2nd ad lib.) Cor.1&2 Trp.1,2&3(ad lib.) F Horns 1,2 Trb.1&2(2nd ad lib.) B. Trb. Euph. Baritone(ad lib.) Tuba(div.) St. Bass(ad lib.) Timpani(ad lib.) B.D. Cym. Side Drum Tri. Tamb.
演奏時間:11:00(約)

出版社:イトーミュージック / ブレーン
楽譜備考:$00A0大英図書館所蔵のホルスト自筆譜をはじめ各種の編曲版を参照し、自筆書の持ち味を生かしつつも 現在のバンドの実情に合った演奏可能な楽譜。
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出版社:日本楽譜出版社
楽譜備考:大英図書館所蔵のホルスト自筆譜を伊藤康英が校訂した原典版ポケットスコア。
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歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲

Title:Intermezzo Sinfonico from ‘Cavalleria Rusticana’ (by P. Mascagni)

プログラムノート  1890年、楽譜出版社ソンゾーニョ社による一幕もののオペラ作曲コンクール第2回に、ピエトロ・マスカーニが出品し優勝した作品。(ちなみにプッチーニは第1回に「妖精ヴィッリ」を提出するも落選。その後舞台化された後リコルディ社の目に留まったという経緯がある)。原作は、イタリアの小説家・ジョヴァンニ・ヴェルガ(1842-1922)が1880年に出版し1884年に舞台化された小説。題名は「田舎の騎士道」といった意味。
 この処女作オペラのあまりに爆発的なヒットのため、逆にその後は翳んでしまったきらいがあるマスカーニであるが、15作のオペラを残し、中でも「友人フリッツ」などは名作としてしばしば上演されている。現在では、「カヴァレリア・ルスティカーナ」は、同じく一幕もののオペラ「道化師」(ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857-1919)作曲)と組み合わせて一晩の演目として上演される慣わしになっている。両作品とも、感情をあらわに表現する「ヴェリズモ」オペラの真骨頂として知られている。
 全編は70分ほどの短いオペラであり、その後半にこの「間奏曲」が置かれている。「間奏曲」は、その後の惨劇に先立つ嵐の前の静けさ、とも言える美しい音楽である。が、実はこのオペラ以前にすでに書かれてあった。オペラを想定して書いたのかどうかも分からない。また、「アヴェ・マリア」の歌詞が付けられ、独唱曲としても親しまれている。
 原曲ではオルガンやハープも加わっているが、本日の新編曲ではそれらを用いず、吹奏楽のサウンドのみで表現する。