吹奏楽作品
独奏楽器と吹奏楽
Title:The Spanish Horn, Concerto for Horn and Band
作曲年月日:2022年 11月 8日
編成:Hrn. Band
演奏時間:10(約)
プログラムノート |
ホルン四重奏のために《スパニッシュ・ホルン》という曲を書いたことがある。現在のホルンは「フレンチ・ホルン」と呼ばれるが、「イングリッシュ・ホルン」なるダブルリードの(オーボエの仲間の)楽器もあり、それならば「スパニッシュ・ホルン」という楽器があっても面白いかも、あるいはそういう名前の作品があったら楽しいだろうと作曲したものだ。その名の通り、スペインらしいメロディを用いたり、中間部には、いわゆる「ラ・フォリア」も現れたりする。これは「スペインのラ・フォリア」とも呼ばれ、F.リスト(1824-1886)もピアノ曲《スペイン狂詩曲》で使用している。ほかにもA.コレッリ(1653-1713)はじめ多くの作曲家がこの主題を用いている。 それをもとにホルンと吹奏楽のために作り直した。その意味では「編曲」となる。スペインらしさを堪能いただきつつ、プログラム後半のスペインの作曲家作品へと繋ぐ。 |
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Title:Sonata for Trombone and Band
作曲年月日:2021年 8月
編成:Trb. Band
演奏時間:13(約)
プログラムノート |
さまざまな管楽器のために「ソナタ」を書いてきた。 高校時代には《フルート・ソナタ》(1979)を、それから外囿祥一郎さんに《ユーフォニアム・ソナタ》(2005)を、いずれも調性によるきわめて古典的な形式による。 宮村和宏さんのために《オーボエ・ソナタ》(2017)を書いた際には、名作サン=サーンスやプーランクの延長上にある調性のソナタを、という「制約」を設けられたことで、「ソナタ形式」についてもう一度考えてみた。 西洋音楽というものは、ある限られた時間を音で構築する芸術だと思う。そのために複数のメロディを登場させたり、さまざまに展開、転調など技法を凝らしたりという、作曲家の工夫の妙味を楽しむものだと思う。 《オーボエ・ソナタ》に続いて、玉木 優さんに《トロンボーン・ソナタ》(2019)を、磯部周平さんに《クラリネット・ソナタ》(2021)を書いた。こうなると「ソナタ」を書くことは自分にとってのライフワークの一つと位置付けても良いのかもしれない。数で言えば、サン=サーンスやプーランク、ドビュッシーをこえたし。(ただしこれ以上書いたらヒンデミットになってしまうぞ)。 いずれのソナタにも通じることは、派手さこそはないものの、西洋音楽の醍醐味たる形式の美しさや、調性の構造などにはかなり工夫を凝らしたということだ。 さて、本日は《トロンボーン・ソナタ》の吹奏楽伴奏版の初演となる。 もともとはピアノ伴奏のために作曲しているので、「協奏曲」ではない。しかし、ピアノ譜がオーケストラ的な色彩を求めていることから、《トロンボーン・ソナタ》の初演直後から、玉木さんからは「吹奏楽版」の作曲を依頼されていた。 全体は切れ目のない3つの楽章からなる。 ヴィルトゥオジティはあまり求められないながらも、玉木さんの素晴らしいテクニックと表現力に頼んで、きわめて広範囲の音域と、闊達に動き回るフレーズを書いた。 第1楽章は変ロ短調、ソナタ形式(提示部の繰り返しは、反復記号ではなくすでに楽譜に書かれている)。 第2楽章はト短調。間にト長調を挟むいわゆる三部形式と言ってよいだろう。 第3楽章はロンド形式ふうな展開。最後に第1楽章の第1主題が再現される。 そして、第2楽章には、自作のオペラ《ある水筒の物語》(高木 達 台本)のメロディを引用している。そのことについて少々記しておく。 このソナタの作曲直前にこのオペラを作曲、2019年5月31日、6月1日に初演された。 第二次世界大戦末期の1945年6月、静岡県静岡市での「静岡空襲」の際、2000名以上の日本人犠牲者が出たことに加え、2機のアメリカ軍のB29が空中衝突し、アメリカ兵23名も亡くなった。「死んでしまえば敵も味方もない」と、毎年B29の戦没者追悼の慰霊祭が行われている。それを何十年も継続されている静岡の医師・菅野寛也先生のお名前をここに書いておこう。このオペラは敵味方をこえた慰霊・追悼をテーマとしている。 そして第1幕第5場には、老夫婦とその息子(戦地で亡くなった兵士の霊)による三重唱がある。このメロディは、初演後も多くの関係者の間で印象に残っていたようで、オーケストラの奏者たちも口ずさんでいた。 と、ふと気づいたのは、《トロンボーン・ソナタ》は、アメリカで初演が予定されている。かつて敵国関係にあったアメリカと日本との間にこんなことがあったという記憶のために、このメロディを引用しようと考えた。 ところが、奇妙なことに、予定されていたアメリカ初演は叶わなかった。また今年の7月にもアメリカでの演奏が予定されていたにも関わらず、結局プログラムに収めらなかった。なんとも異な事である。 なお、ピアノ伴奏版と吹奏楽伴奏版とはほぼ同じではあるが、吹奏楽で伴奏するという特性を生かして若干の相違点がある。その違いは、来年初めにリリースされる玉木さんのCDに収められるピアノ伴奏版や、このたび出版のピアノ伴奏版の楽譜で確かめてみてください。 原曲の《トロンボーン・ソナタ》の世界初演は、2019年9月29日、デンマークのセナボーにあるアルシオン・コンサートホールでの玉木 優リサイタルにて。日本初演は、同年12月1日、東京新大久保のダ・カーポ地下ホールにて。またNHK大阪ホールにて公開収録され、2020年3月1日と8日にはNHK-FMの「リサイタル・パッシオ」でオンエア。 $00A0 本日の機会をいただいたことを感謝しています。 |
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初演データ |
(初演日)2021年9月26日 (初演者)玉木優、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ |
Title:Concerto for Trumpet and Band
作曲年月日:2018年 2月 24日
演奏時間:15(約)
出版社:イトーミュージック/ブレーン 購入サイト: こちらをクリック |
プログラムノート |
オッタヴィアーノさんのトランペットは、まさに歌のようだ。それも、歌詞が付いているかのように・・・。日本フィルハーモニー交響楽団のソロ・トランペット奏者であるオッタヴィアーノ・クリストーフォリさんの演奏を聴いてそう思った。そのため、このトランペット協奏曲は、トランペットらしい華やかなファンファーレのイメージではなく、むしろ、歌にあふれた作品となった。 全曲は通して演奏されるが、古典的な3つの楽章からなっている。第1部「アレグロ・ヴィーヴォ(生き生きとしたアレグロ)」は、ソナタ形式。ただし、第2主題の再現を欠く。その第2主題は、続く第2部「アンダンティーノ・レント(アンダンテよりやや遅く)」のメロディーとなる。イタリアの作曲家・ヴェルディふうである。この偉大な作曲家へのオマージュであるとともに、この協奏曲が初演されるイタリアへのオマージュでもある。第3部「踊り」では、洋の東西を問わずさまざまな「踊り」の音楽が聞かれる。世界中の踊りを通して、地上の平和を願うものである。(伊藤康英) |
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初演データ |
(初演日)2018年3月17日 (初演者)ヴィル・イゾンツォ吹奏楽団、オッタヴィアーノ・クリスト―フォリ(トランペット独奏)、フルヴィオ・ドーゼ(指揮) (初演場所)ウーディネ(イタリア)国際ユース・バンド・コンテスト・オープニング |
委嘱者 | ヴィル・イゾンツォ吹奏楽団(イタリア) |
備考 | ピアノ・リダクション版あり。 なお、第2楽章は『青のアリア(Azzura, Air for Fugelhorn and Piano)』と題した独立した曲ともなっている。 |
Title:Concerto for two Trumpets and Band
作曲年月日:2018年 1月 16日
演奏時間:16:30(約)
出版社:イトーミュージック/ブレーン 購入サイト: こちらをクリック |
プログラムノート |
香港チェンバー・ウィンド・フィルハーモニア(Hong Kong Chamber Philharmonia)委嘱。ポール・アーチボルト(Paul Archibald)、クリストファー・モイーズ(Christopher Moyse)の独奏により、2018年2月19日、香港シティ・ホール・コンサート・ホール(香港大会堂音楽庁)にて初演。指揮は譚子輝(Victor
Tam)。 極めてテンポの速い第1楽章は、2本のトランペットが常にカノンふうに絡み合いながらのソナタ形式。第2主題は、ハイドンのトランペット協奏曲へのオマージュ。途切れなく第2楽章「パッサカリア」へ。 ここでは中間部に「チョコレート・ダモーレ」のメロディーが変型されて引用されている。そのまま引き続き第3楽章へ。8分の6拍子でティンパニがリズムを刻み、第1楽章の第1主題と、第2楽章のメロディーとが変形されて交互に現れる。 |
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初演データ |
(初演日)2018年2月19日 |
副題:サクソフォーンとユーフォニアムのための二重小協奏曲
Title:A Carnival Day, concertino for alto saxophone and Euphonium (Fanfare Orchestra edition)
作曲年月日:2015年
初演データ |
(初演日)2015年5月2日 (初演者)シンフォニックファンファーレ東京 原博巳(サクソフォーン)、安東京平(ユーフォニアム) 指揮:伊藤慶亮 |
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Title:Concerto for Tsugaru-Shamisen and Band
作曲年月日:2013年 8月
演奏時間:14:00(約)
出版社:イトーミュージック / ブレーン 購入サイト: こちらをクリック |
プログラムノート |
津軽三味線はユニークな楽器で、一音聴いただけで我々を北国に誘ってくれる。それから、ロックにも通じる激しさを持っている、カッコイイ楽器なのだ。もっと面白いことがある。3本の糸の「音合せ」つまりチューニング、それ自体がすでに音楽の一部になっているのだ。(それに対して、西洋のオーケストラのチューニングは耳障りに感じられますね)。そうした津軽三味線の特性をいかした協奏曲を作曲した。 曲の構成は次の通り。 音合せの後、「津軽じょんから節」ふうの音楽から始まる。次いで吹奏楽を主体とする部分。さらに音合わせの後「津軽三下がり」ふうの音楽。(ここは、各拍の長さが不均等になっている「3拍子」。日本の音楽には、こんな複雑なリズムがあるのです。注目してください)。そして最後は変拍子を伴う活気あふれる音楽。ロックの音楽にも共通すると思う。その中で再度の音合わせにより色彩が変わり高揚して幕切れとなる。以上、4つの部分から成り立っている約14分の作品。(初演プログラムノート/伊藤康英) |
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初演データ |
(初演日)2013年11月10日 (初演者)山口晃司(津軽三味線)一宮市消防音楽隊 指揮:鈴木竜哉 (初演場所)一宮市消防音楽隊第35回定期演奏会 (一宮市民会館) |
委嘱者 | 一宮市消防音楽隊 |
副題:サクソフォーンとユーフォニアムのための二重小協奏曲
Title:A Carnival Day, concertino for Saxophone and euphonium [Sax. Euph. Band]
作曲年月日:2011年
編成:A-Sax. Euph. Band
演奏時間:6:30(約)
出版社:イトーミュージック/ブレーン 購入サイト: こちらをクリック |
プログラムノート | サクソフォーンとユーフォニアムという、(オーケストラにはない)二つの楽器のための二重協奏曲的な小品。 |
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初演データ |
(初演日)2011年11月26日 (初演者)FUYUON! 2011 亜洲新世界 洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウインド・アンサンブル+新竹教育大学音楽学部吹奏楽(台湾)サクソフォーン:小林悟 ユーフォニアム:幸崎仁志 (初演場所)前田ホール |
副題:1.ブラック・コーヒー・ソナタ 2.チョコレート・ダモーレ 3.ホワイトデイ・サンバ
Title:Concertino for piano and band 1.Black-Coffee-Sonata 2.Cioccolata d'amore 3.White-day- Samba
Subtitle:1. Black-Coffee-Sonata 2. Cioccolata d'more 3. White-Day-Samba
作曲年月日:2007年
編成:Solo-Pf. Fl. Picc. Ob. Bn. BbCl. B-Cl. Alt.Sax. Ten.Sax. Bar.Sax. Hrn. BbTrp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc. Xylo.
演奏時間:13:00(約)
出版社:イトーミュージック / ブレーン 購入サイト: こちらをクリック |
1. Black-Coffee-Sonata | |
2. Cioccolata d'more | |
3. White-Day-Samba |
初演データ |
(初演日)2007年12月1日 (初演者)Special C-wind "Wish"(洗足1年生有志)、伊藤康英ピアノ (初演場所)川崎多摩市民館 |
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備考 | Band Journal 2007年9月号、12月号、2008年3月号付録 |
副題:I.Capriccio II.Scherzo III.Introduction and Rondo
Title:Sopra l'arie antiche, Concerto for Violin and Wind Ensemble
作曲年月日:2006年 11月 24日
編成:Vn.(Solo) Band
演奏時間:27:00(約)
出版社:イトーミュージック / ブレーン 購入サイト: こちらをクリック |
mov.Ⅰ | |
mov.Ⅱ | |
mov.Ⅲ |
プログラムノート |
吹奏楽では、オーケストラの作品を編曲して演奏することがしばしばある。それなのに、弦楽器が一体どのような音色で演奏されるか知らずに演奏することも多い。そこで、ヴァイオリンを目の当たりにしてもらおうと思い、昨年まで担当していた洗足学園音楽大学での「フレッシュマン・ウィンド・アンサンブル」のおいて、ヴァイオリンと吹奏楽の作品を3年に亙って書き下ろした。それを3楽章形式の協奏曲として「全曲初演」する。 各楽章のは、ヴァイオリンのためのメロディとしてよく知られたものを使った。一覧しておこう。 【第1楽章】カプリッチョ A.コレッリ(1653-1713)の「ラ・フォリア」(このメロディはリストが「スペイン狂詩曲」でも使っている)。 N.パガニーニ(1782-1840)の「カプリス」から第24番(これは、ブラームス、ラフマニノフ、ルトフワフスキー、ロイド=ウェッバーらが変奏曲として使っていることでも有名)。 【第2楽章】スケルツォ N.パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番終楽章(いわゆる「ラ・カンパネラ」(鐘)。リストの超絶技巧練習曲にも同名の曲あり)。 【第3楽章】序奏とロンド さて、この楽章にもある有名なメロディ(の一部)を使ったのだが、これはあえて伏しておきますね。さて、何のメロディでしょう。 (初演プログラムノート/伊藤康英) |
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初演データ |
(初演日)2009年7月12日 (初演者)水野佐知香(Vn.)、洗足グリーン・タイ ウインド・アンサンブル、伊藤康英指揮 (前田ホール) |
備考 | ピアノリダクション版あり |
副題:ヴァイオリンと吹奏楽のための
Title:Carmen Fantasy (by G. Bizet) for Violin and Wind Band
原作者:Georges Bizet
作曲年月日:2005年 11月 17日
編成:Vn.(Solo) Picc. Fl. Ob. Ehorn. Bn.Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc. Hp.
プログラムノート |
ビゼーのオペラ「カルメン」には、有名なメロディが多い。ここからいくつかのメロディを選び出そうとすると困ってしまうほどだ。このファンタジーで取り上げたメロディも、そのほとんどをみなさんご存じのことだろう。 もともとはフルートとピアノのために作曲。この編成のためには、ボルヌの作曲した「カルメン・ファンタジー」がつとに有名であり、かつて私の友人とのコンサートでボルヌの「カルメン・ファンタジー」をやろうと思い、チラシに「カルメン・ファンタジー」と勝手に書いてしまった。ところが、友人は、どうやらボルヌの作品を好ましく思わなかったらしい。そこで一計を案じた。そういえばちらしには作曲者名を書いておかなった。タイトルがおなじならばチラシに偽りはない。そんなわけで、伊藤康英版「カルメン・ファンタジー」ができあがった。 本日は、新たにヴァイオリン・パートを書き下ろし、吹奏楽のサウンドとともにお楽しみいただきます。 (ヴァイオリン版初演プログラム/伊藤康英) |
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初演データ |
(初演日)2005年12月11日 (初演者)水野佐知香(Vn.)洗足学園音楽大学フレッシュマン・ウィンド・アンサンブル、伊藤康英指揮 (洗足学園前田ホール) |
Title:Euphonium Cocerto [Euph. Band]
作曲年月日:2005年 6月 6日
編成:SOLO Euph. Hp. 2Fl. 2Ob. 2BbCl. Alt.Cl. Bas.Cl. 2Alt.Sax. 2Bn. 3Hrn. 3Trp. 3Trb. Tub. Cb. Tim. Perc. Cymbals , Bass Drum
演奏時間:17:00(約)
プログラムノート |
『ユーフォニアムの時代「ユーフォニアム協奏曲」に寄せて』 昨年(2004年)の日本管打楽器コンクールは私にとって感動的だった。ユーフォニアム部門の審査員を務めたのだが、最近の若いユーフォニアム奏者たちの何と素晴らしいことか。これがユーフォニアムだろうかと思われるほどの多彩な音色を、参加者が次から次へと繰り広げてくれるのを聴きああこの楽器も、フツウの人たちが楽しめる時代になったのだと実感した。 思い返すと、もう20年以上も前、高校の一年後輩のサクソフォーン奏者・須川展也氏によくこんな話をしていた。サクソフォーンのコンサートなんて、同業の人たちが勉強のために(あるいはあら探しのために)聴きにくるだけじゃあないか。もっとフツウの人たちが楽しめるようでなくちゃ。結果、今では、サクソフォーンはフツウの人たちが楽しめるメジャーな楽器となり、その多彩な音色は多くの人たちを魅了している。 いよいよユーフォニアムにもそういう時代が到来したのだなあと思う。 件のコンクールで一緒に審査をしていた外囿氏とあれやこれやと話をしているうちに、一つ協奏曲を書いてみたいなあと思い始めた。 この協奏曲は、たとえばパガニーニのヴァイオリン協奏曲のような、独奏者の技巧を誇示する類のものではない。ひたすらに、外囿氏の美しい音色によりかかって書いたものだ。しかしながらこの曲は、かなりの難曲だ。難曲だが、決して難しそうに吹いてはならない。ユーフォニアムはこんなに美しい音を持っているのだよということを、さりげなく、あくまでさりげなくアピールすることで、この楽器の魅力が拓けないものか、とそう希った作品である。 全体は一つの楽章ながら、そこに従来の協奏曲の要素のすべてを収めた。 なお、思うところあって、伴奏は極めて少人数の管楽合奏の形態を採ってある。さらに、独奏部分の大半は、ハープがこれを支える。昨秋に作曲した「フルート・ダモーレ協奏曲」以来ちょっと気に入っている編成です。 (初演プログラム/伊藤康英) |
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初演データ |
(初演日)2005年6月19日 (初演者)航空自衛隊航空中央音楽隊、外囿祥一郎(ユーフォニアムソロ)、中村芳文指揮 (初演場所)すみだトリフォニーホール |
委嘱者 | 航空自衛隊航空中央音楽隊 |
CDタイトル:コンチェルト・トリロジー レーベル・CD番号:KOSEI PUBLISHING (KOCD4301) CD備考: 購入サイト: こちらをクリック |
Title:Concerto per Flauto d'amore ossia Concerto per Flauto [Fl. Band]
作曲年月日:2004年 10月 22日
編成:SOLO Flute d'amore in Bb (SOLO Flute in C) Hp. 2Fl. 2Ob. 2Cl. A-Cl. B-Cl. A-Sax. 2Bn. 3Hrn. 3Trp. 3Trb. Tub. Cb. Timp. Perc.
演奏時間:17:00(約)
プログラムノート |
この曲は、フルート・ダモーレでも、ふつうのフルートでも、どっちでも吹けるようになっている。が、たぶんこの曲は、フルート・ダモーレのためのはじめての協奏曲になるかと思う。 ところで、これまでにフルート協奏曲には名曲があったろうかと考えてみる。まあふつうはモーツァルトやイベールを挙げるだろう。しかし、たとえばヴァイオリンをみてみる。すると、誰しもが知っているメンデルスゾーンやチャイコフスキーなどの協奏曲(コンチェルト)がある。いわゆるメンコン、チャイコン、である。ギターの世界にだってロドリーゴのアランフェスの協奏曲があるではないか。この作曲者の名前に覚えがなくとも、必ずやどこかで耳にしている曲である。そうすると、まだまだフルートには、これぞ、という曲はないなぁという気がしてきた。 よし、それなら、フルート協奏曲の「名曲」を書いてやろうと思った。できあがった作品は、さて名曲であるかどうかは分からないが、とにかく、限りなく美しいメロディで綴った作品となった。 なお、私が作曲して、渡瀬君が独奏、伴奏は筑波で、という依頼を、このバンドのOBであるN.K氏より受けた。感謝の意を記しつつ、この作品を本日のソリスト・渡瀬英彦君に捧げる。(初演プログラム/伊藤康英) |
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初演データ |
(初演日)2004年11月6日 (初演者)渡瀬英彦(Fl.)、中田園子(Hp.)、筑波大学吹奏楽団、伊藤康英指揮 (初演場所)「筑波大学吹奏楽団第52回定期演奏会」ノバホール |
委嘱者 | 西一夫氏 |
副題:フルートと吹奏楽のための
Title:Carmen Fantasy for Flute and Wind Band (by G.Bizet)
原作者:Georges Bizet
作曲年月日:2001年 04月 11日
編成:Fl.(Solo) Picc. Fl. Ob. Ehorn. Bn.Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc. Hp.
プログラムノート |
ビゼーのオペラ「カルメン」には、有名なメロディが多い。ここからいくつかのメロディを選び出そうとすると困ってしまうほどだ。 このファンタジーで取り上げたメロディも、そのほとんどをみなさんご存じのことだろう。 もともとはフルートとピアノのために作曲。この編成のためには、ボルヌの作曲した「カルメン・ファンタジー」がつとに有名であり、かつて私の友人とのコンサートでボルヌの「カルメン・ファンタジー」をやろうと思い、チラシに「カルメン・ファンタジー」と勝手に書いてしまった。ところが、友人は、どうやらボルヌの作品を好ましく思わなかったらしい。そこで一計を案じた。そういえばちらしには作曲者名を書いておかなった。タイトルがおなじならばチラシに偽りはない。そんなわけで、伊藤康英版「カルメン・ファンタジー」ができあがった。 |
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委嘱者 | 東京佼成ウインドオーケストラ |
Title:Ryukuan Fantasy, for Piano and Band
作曲年月日:1999年 03月 03日
演奏時間:5:00(約)
出版社:イトーミュージック / ブレーン 楽譜備考:$00A0レンタル楽譜 購入サイト: こちらをクリック |
プログラムノート | ピアノのアンサンブルというものは、時に打楽器的な色彩を持ち合わせるが、この、NTT東日本東京吹奏楽団の依頼で作った「ピアノと吹奏楽」版もまた、そうした色彩をうまく表すことができたなあ、と自分でも気に入っている。 |
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初演データ |
(初演日)1999年05月14日 (初演者)伊藤康英(pf)・NTT東日本東京吹奏楽団 指揮:山田昌弘(日本初演)。伊藤康英(pf&指揮)・天方吹奏楽団(アメリカ初演) |
委嘱者 | NTT東日本東京吹奏楽団 |
備考 | 原曲は2台ピアノ8手連弾。他に、2台ピアノ版、1台ピアノ版、ヴァイオリンとピアノ版、ピアノ独奏版、ソプラノ・サクソフォーンとピアノ版、ピアノ七重奏版、(弦5部、打楽器、ピアノ)、ピアノ六重奏版(弦5部、ピアノ)、ヴァイオリンとサクソフォーン四重奏とピアノ版(ヴァイオリンはオプション)、サクソフォーン四重奏版あり。 |
CDタイトル:交響詩「時の逝く」 伊藤康英吹奏楽作品集 レーベル・CD番号:CAFUA RECORDS(CACG0015) CD備考: 購入サイト: こちらをクリック |
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CDタイトル:忠臣蔵異聞 レーベル・CD番号:CACG-0106 CD備考: 購入サイト: こちらをクリック |
副題:初演のジャズバンド版に基づく吹奏楽用編曲
Title:Rhapsody in Blue (by G. Gershwin)
原作者:George Gershwin
作曲年月日:1998年
編成:SoloPf. 3Fl. Ob. SoloCl. 4Cl. Bas.Cl. Sop.Sax. AltoSax. Ten.Sax.Bar.Sax. 3Hrn. 2Trp. 3Trb. Euph. Tub. Cb. Perc.
プログラムノート |
「この編曲について」 1924年2月に初演されたこの曲は、ホワイトマン・バンドの委嘱によるものだった。わずかに2週間ほどでガーシュウィンは2台ピアノのために作曲。それをグローフェ(1892-1972)がオーケストレーションを施した。そのときの編成は次のとおり。 8人のヴァイオリン、コントラバス、3人の木管奏者(①Bbクラリネット、バス・クラリネット、オーボエ、ソプラノとアルト・サクソフォーン持替、②アルト、ソプラノ、バリトン・サクソフォーン持替、③テナー、ソプラノ・サクソフォーン持替)、トランペット2、トロンボーン2、ホルン2、チューバ、ティンパニ、打楽器、バンジョー、チェレスタ、ピアノ(独奏以外にもう一台)。 その後1926年にグローフェはオーケストラへ編曲。また37年には吹奏楽に編曲。これは、吹奏楽での演奏に際して通常用いられている楽譜で、実際にはアメリカの大編成用のバンド向きの編曲(ピアノ無し)となっている。そして、ガーシュウィンの死後、1942年にグローフェは再度オーケストラへ編曲した。これが現在通常にきかれる演奏である。 この曲の度重なる編曲により、あるいは演奏を重ねるうちに、原曲の姿が少しずつ変わっていったことは否めない。 たしかにオーケストラに編曲されることでこの曲は、立派に「クラシック」の仲間入りを果たすことができ、20世紀の「クラシック」の重要なレパートリーとなった。しかし、この曲の現在しばしば聴かれる演奏が、あまりに「クラシックのピアノ協奏曲」然としては居過ぎないか。 これが、私がこの編曲を新たに作った最大の理由である。 初演のジャズバンド版の、グローフェによる手書きファクシミリ譜が出版されているが、これには、とにかく初演に間に合わせるための徹底的な省略記号の使用や書きなぐり、書法の細部の不統一がみられる。グローフェは、初演に際して気掛かりだったところ、あるいは演奏を重ねるたびに生じた演奏上のニュアンスなどをスコアに書き入れ、それを編曲のたびに楽譜に固定したのだろう。そのために、音楽に表現力の深さは感じられるようになったが、しかしその一方で、初演に向けてとにかくスコアを書き飛ばしていった、あのエネルギーが失われてしまった。 ちなみに、この曲の演奏は、現在では18分余りかかることになっているが、ガーシュウィンの演奏は、概ね15分程度である。 この版は、ジャズバンドのためにグローフェが最初にオーケストレーションした手書きファクシミリをもとに、いくつかの明らかな誤りを直し、加えて、私自身の演奏へのアイディアをいくつか加えたものである。スコア中の[]書きの指示は、現在の管弦楽版によるもの。その違いも確かめつつ、新たな、そして最もオリジナルに近い《ラプソディ・イン・ブルー》の姿を見つめてほしい。 また、演奏に際しては、市販されているジャズバンド版による演奏を聴かれることをお薦めする。 なお、一言付け加えるに、オーケストラでの演奏よりも、この版での演奏の方が、よりオリジナルに近いものである。 (伊藤康英) |
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初演データ |
(初演日)1998年12月13日 (初演者)薔薇崇師ウインドシンフォニー、伊藤康英(Pf.)、塩谷晋平指揮(江戸川区総合文化センター) |
備考 |
CDタイトル:交響詩「時の逝く」 伊藤康英吹奏楽作品集 レーベル・CD番号:CAFUA RECORDS(CACG0015) CD備考: 購入サイト: こちらをクリック |
Title:Chopin Fantasy
作曲年月日:1994年 10月 27日
編成:Pf. Picc(Fl3rd). 2Fl. 3Ob. 3BbCl. ASax.TSax. BarSax. 3Bn. 4Hrn.
演奏時間:5:00(約)
プログラムノート |
1994年10月27日作曲。1994年11月23日、アクトシティ浜松にて行われた、ショパン・フェスティバルにて初演。作曲者のピアノ、それから浜松交響吹奏楽団(=浜響吹)の団員が演奏。編成は独奏ピアノ、フルート3、オーボエ3、クラリネット3、サクソフォーン(アルト、テノール、バリトン)計3。ファゴット3、ホルン4、というウィンド・アンサンブル。浜響吹は80人を超える大所帯であるが、こうした小さなアンサンブルも見事、といわしめる立派な演奏だった。だいたい、一つのバンドで、オーボエとファゴットを3本ずつそろえることができるなんて、すごいじゃないですか。 さて、曲は、ショパン作曲の前奏曲第7番に依っている。といってピンとこない人には、某胃酸のCMの音楽、といったらお分かりでしょう。この主題による変奏曲。一応8つの変奏と主題から成っている5分弱の小品。 普通、変奏曲は、まず主題が提示され、それからおもむろに変奏されていくのだが、特にこの主題の場合、それをやってしまうと、手の内、見えたり、てな感じになってしまうので、まず変奏からいきなり始まる。それも、ひねくれた変奏ばかり作った。つまり、冒頭は、木管が確かに某胃酸CMの音楽のメロディを演奏しているのだが、独奏ピアノがショパンの練習曲作品10の1を演奏するものだから、聴いている人は、はて何の変奏だろう、とはぐらかされてしまうのである。ほかにも、多数のショパン作品を引用、ますます、何の変奏か分からなくしている。 で、最後に、原曲通り、ピアノが主題を弾いて種明かし、というわけ。 |
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初演データ |
(初演日)1994年11月23日 (初演者)伊藤康英(Pf.)浜松交響吹奏楽団 (初演場所)「ショパン・フェスティバル」アクトシティ大ホール |
委嘱者 | ショパン・フェスティバル |
備考 | 編成:pf solo、3fl、3ob、3cl、3sax、3fg、4hrn。ショパン作曲、前奏曲第7番による変奏曲。 |
Title:Fantasy Variations, for Euphonium and Band
作曲年月日:1990年 07月 03日
編成:Euph. Band使用打楽器 Timp. Triangle. Sus Cym. S.D. Cym. B.D. Glockeen. Tom.
演奏時間:8:30(約)
プログラムノート |
ポップでライトフレバーで易しくて演奏効果があって親しみやすく……というのが、三浦氏からの委嘱要件であった。 アイヌの音楽を素材として使った。主に用いたのは、「ヤイサマニナ」―恋歌である。アイヌの音楽は一言でいえば「声の音楽」であり、そのなかで「リズム」の強さが打ち出される。(余談ながら、現代の音楽家がシンセサイザーを使いつつ奏でている「ミニマル」的な音楽などは、すでにアイヌの音楽のなかに表現されていた。) この作品は変奏曲ではあるが、いささか変わった形式となった。各変奏がそれぞれ独立した音楽形式になっていることである。つまり、第一変奏が「シャコンヌ」、第二変奏が「ロンド」、そしてテーマが「アリア」、続く第三変奏が「フーガ」となっている。(伊藤康英) |
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初演データ |
(初演日)1990年8月11日 (初演者)三浦徹(Euph)札幌吹奏楽団 指揮:菅原克弘指揮 (初演場所)「国際テューバ・ユーフォニアム札幌大会」教育文化会館 |
委嘱者 | 三浦徹氏 |
備考 | ピアノ伴奏版「ユーフォニアムとピアノのための《幻想的変奏曲》」(Studio Music)、ピアノ連弾版「アイヌ民謡による変奏曲」、ブラスバンド版あり |
CDタイトル:土気シビックウィンドオーケストラ Vol.2 フェスティバル・ヴァリエーション レーベル・CD番号:CAFUA (CACG-0085) CD備考:外囿祥一郎(ユーフォニアム) 購入サイト: こちらをクリック |
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CDタイトル:BRIGHT SUNLIT MORNING レーベル・CD番号:Polyphonic (QRPM149D) CD備考: 購入サイト: こちらをクリック |
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CDタイトル:シカゴ・ライブ レーベル・CD番号:佼成出版社 / KOCD-8010 CD備考: 購入サイト: こちらをクリック |
Title:Variations from "Carnival of Venice" [Euph. Band]
原作者:J. B. Arban
作曲年月日:1988年 10月 05日
編成:Euph. Picc. Fl. Ob. Cl. Sax. Hrn. Trp. Trb. Bari(opt). Tub. Cb. Timp. Perc.
備考 | 1989/7/18改訂 |
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CDタイトル:ユーフォニアム・コンチェルト/牛上隆司 レーベル・CD番号:ブレーン / OSBR-22045 CD備考:ヴェニスの謝肉祭(吹奏楽版) 購入サイト: こちらをクリック |
Title:Vocalise op.34-14 (by S. Rachmaninov) [Sax. Band]
原作者:Sergei Rachmaninov
作曲年月日:1988年 09月 27日
編成:A-Sax. BandPicc. Fl. Ehrn. Cl. Sax. Trn. Trp. Trb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc.
Title:Concerto Fantastique pour Saxophone Alto et Orchestre d'Harmonie
作曲年月日:1983年 03月 12日
編成:A-Sax. BandPercussion:Timp. Gyoban(woodn plate). Sleigh Bells. Vibraphone. Tam. B.D. Sus.Cym. Toms. Drums. Bongos. Congas.
演奏時間:13:00(約)
プログラムノート |
例えばリヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」の如く、この作品に於いても「英雄」が語られている。但しそれはギリシャ古典劇などにみられるような「英雄」ではなく、ドナルド・キーンが「花道に立つと背がのびる」と言っていることから分かるように、極めて日本的な「英雄」なるものを目指している。「孤独ではあるが自己超克」(ツヴァイザムカイト)たらんと欲した似而非英雄が、次第に偉大なる英雄に成長し、大見得を切ったその時、果たして彼は真に英雄たる事ができたか否か? 曲は打楽器によって開始され、ソロ・サクソフォーンがこれを受け継ぐ。このカデンツァによって全曲のモットーが提示され、低音楽器の強烈な音塊で始まる第一部に入る。この第一部は「アポロン的」また、それに続く第二部は「ディオニソス的」である。そして最後は、打楽器に支えられたソロ・サクソフォーンによって華々しく終わる。しかしながら、この最後のカデンツァは、一体、「Hymne」(讃歌)であるのか、それとも「Catastrophe」(破局)であるのかは、私にも分からない。 |
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初演データ |
(初演日)1983年04月07日 (初演者)須川展也(A.Sax.)浜松北高校吹奏楽部 指揮:伊藤康英指揮 (初演場所)「浜松北高校吹奏楽部演奏会」浜松市民会館 |
委嘱者 | 須川展也氏、及び静岡県立浜松北高校吹奏楽部 |
備考 | バンド・パートの2台ピアノ用編曲版あり。 |
CDタイトル:深層の祭 ~フェイバリット・パスト・アルバム・シリーズ レーベル・CD番号:佼成出版社 / KOCD-2902 CD備考: 購入サイト: こちらをクリック |