
吹奏楽のためのアダージョ
Adagio for Band
演奏時間:約10分30秒
楽器編成: Fl. Picc. Ob. Bn. Eb Cl. Bb Cl.1,2,3 Alt.Cl. Bas.Cl. Alt.Sax.
Ten.Sax. Bar.Sax. Hrn.1,2,3,4 Trp.1,2,3 Trb.1,2,3 Euph. Tub.
Cb. Hp. Timp. Perc.1,2,3 Mallets
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2006年、玉川学園高等部吹奏楽団の委嘱により作曲。
楽語に用いられる音楽用語をあれやこれや眺めるのが好きだ。たとえば、フェルマータ(fermata)というのはバス停のことでもあり、クレッシェンド(crescendo)というのは、フランス語のクロワッサン(croissant)と同じ意味だ、とか。
アダージョ(Adagio)というのは、通常ゆっくりとしたテンポで演奏することや、緩徐楽章(ゆっくりとした楽章)を意味する。しかしこのイタリア語の言葉の語源を辿ると、ラテン語のagioに行き着く。これは、平安、 安らぎ、穏やかさ、といった意味だ。それにadという前置詞が付いてadagioとなったらしい。前置詞adは、英語に置き換えるとtoとかtoward、つまり、「~の方向へ」という意味がある。たとえば「アドリブ」という言葉はラテン語であり、ad libitumつまり、「自由の方向へ」というニュアンスを持った言葉である(…などと書いていると、なんだか外国語の授業のようですね)。ですからこの曲の題名adagioは、強いて訳すと「安らぎの方向へ」あるいは「toward the peace」(平和に向かって)ということになろうか。
穏やかならぬ事件があまりにも相次ぐ今の時代への、私からのささやかなメッセージである。
(初演プログラム/伊藤康英)

