ウィンド・アンサンブルのためのシャコンヌ(2017年版)
1988年に抜粋版を作ってから30年近くたち、ようやく全曲版編曲完成と相成った。
バッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV 1004」の終曲を飾る「シャコンヌ」は、多くの作曲家を刺戟し、J.ブラームス(1833-97)の(左手のみによる)ピアノ編曲、はたまた斎藤秀雄(1902-74)によるオーケストラ編曲など、さまざまな編曲がある。とりわけ、F.ブゾーニ(1866-1924)によるダイナミックなピアノ編曲は、バッハ作品の再創造として、広くレパートリーとなっている。そう、それこそが「編曲」なのだ。原曲の持ち味からの新たな創造。ならば、吹奏楽ならではの色彩を生かしたものが作れないか、と考えたのがきっかえだった。冒頭部分はトロンボーンのアンサンブルで、と、畏友である渡部謙一氏(現・北海道教育大学)の一言でアイディアがわき、ブゾーニ版を参考にしつつシェーンベルクの音色旋律ふうな処理による細かいオーケストレイションを施した。
なお、この作品はほぼ黄金分割比で成り立っている。最初の短調部分と続く長調部分の比、そして、その長調部分と最後の短調部分の比、これらが黄金分割に近い。(したがって、長調部分に入る段階でほぼ半分)。1988年版は、各部分をさらにほぼ黄金分割比に従ってカットしたものであった。4小節を単位として数えると全部で34回。原曲は64回。ただし今回の版は「全曲」版ではありながら、分割比を保つために若干のカットを施し、全部で61回とした。
A ニ短調 [1]-[31](31回)
[1]-[19](19回)*
[20]-[31](12回)
B ニ長調 [32]-[49](18回)
[32]-[42](11回)*
[43]-[49](7回)
A ニ短調 [50]-[61](12回)
[51]-[57](7回)
[58]-[61](4回)*
「*」は、1988年とほぼ同一の部分。この部分については、ほぼ、再編曲の手を加えていない。
ところでこの作品は、原曲のヴァイオリン独奏版などすべての版においてとかく重いテンポで演奏されがちなのだが、そもそもChaconneは舞曲であることを考え、全体に軽めのテンポに設定し、全体のテンポ設計をなるべく単純化した。
楽器編成としては、1988年版とはほとんど同じであるが、コントラバス・クラリネットを追加した。
初演は、2017年6月22日、洗足学園前田ホールにおける、洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウインド・アンサンブル(指揮:藤岡幸夫)。
6月22日(水)洗足学園音楽大学GWE演奏会
日時:2017年6月22日(木)18時30分開演(18時開場)
会場:洗足学園音楽大学 前田ホール
入場料:一般 1,000円
出演者:洗足学園音楽大学グリーン・タイ・ウィンドアンサンブル(企画運営責任者:伊藤康英)
指揮:ティモシー・レイニッシュ(元・王立ノーザン大学教授)
藤岡幸夫
プログラム:P.A.グレインジャー/民主主義行進の歌